スポンサーサイト
--.--.--(--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
// --:-- // スポンサー広告
 アテネの小さな神様。
2006.08.03(Thu)
バスは、僕らを降ろしてとっとと走り去ってしまった。
自分たちがどこにいるのかも解らない。地図(詳細な)もない。むろん、どこに競馬場があるのかさえ解らないまま、アテネの郊外で迷子になった。昨晩、ホテルのレセプションに“Markopoulo”“Race Track”というキーワードで訪ねたのが完全に裏目に出た。どうやらホテルのレセプションは、僕が競馬をやるために“Markopoulo”に行きたいという意図が伝わっていなかったようだ。やはり“Race Track”は通じなかった。
さすがに、背中を冷たいものが流れる。不思議なもので、人間、どうしようもない状態に陥ると笑いがこみ上げてくる。幸い、近くにタクシー乗り場があったので、どうしようもなくなったらタクシーを使えばいいという結論で、取りあえず周辺をぶらついてみることにした。
だが、あるのは住宅とさびれたカフェテラス、怪しいブティックばかり。どう考えても、この近くに競馬場があるとは思えなかった。しかも、外は炎天下。持参した水もとうにお湯に変わっていた。売店を見つけたので、飲み物を買う。ついでに、競馬場について聞いてみることにした。
「Do you know Race Track?」
駄目だ。売店の兄ちゃんは困った顔をするばかりだった。ふと、ノートに書いたある言葉を思い出した。バッグからノートを取り出し、それを読み上げる。
「…ヒ…ポドロ…モ」
ギリシャ語で競馬場の意味である。これは、blogを通じて尽力してくださったpomさんから教えられた言葉。ギリシャ語表記を書いてなかったので、読み上げるしかなく、通じるかどうか解らなかった。連呼する。ヒポドロモ…ヒポドロモ…ヒポドロモ…
その時、背後から声がした。そこには、ペンキまみれのエプロンをしたオジさんが立っていた。笑っていた。
「I want to go to ヒポドロモ」
僕は馬の真似をしながら、必至に言った。
「Do you want to go toヒポドロモ?」
オジさんは、お金をベットする手振りをつけながら、そう聞いて来た。どうやら、解ってくれたようだ。何度も頷く。すると、一本の道の方を示しながら、こう言った。
「Go this way 300m。And you turn left。Go streight 3Km!」
3Km!!!!! 思わず大声を出した。オジさんは、とびきりの笑顔で「Yes,3Km」と繰り返した。3Kmとは尋常ではないが、確かにここに競馬場があることは解った。オジさんに別れを告げ、僕らは歩き出した。

「Good Luck!」オジさんは、3度目の笑顔でそう言った。
オジさんに言われた通りに、300mほど歩くと、そこに看板があった。

「あれ、ヒポドロモって書いてない?」と嫁。ギリシャ語ではPはRになる。つまり、POMOという部分はROMOと読む事ができる。オジさんが言った300m付近でもあるし、そこを左折することにした。しばらく歩くと、住宅街を抜けた。代わりに、拓けた野原が現れた。
  
「まじかぁ」思わず、ため息がもれた。人など歩いていない。露店もない。車もほとんど走っていない。さらに、競馬場らしき建物すら見えてこない。競馬場には辿り着けないかもしれない…。それでも、暑さと疲労で重くなった体を前へと出す。かろうじて視界に入る建物を指し、「あれが競馬場かもしれない」と自分にいい聞かせながら、一歩一歩ゆっくりと進む。
道の真ん中に、一匹の野良犬が立っていた。動物が苦手な嫁の歩みが止まる。「走ったり、おどおどしなければ何もせんよ」と促して、ゆっくり進み出す。その野良犬は山の方へ走り去って行った。そこに、一人の青年を見つけた。確認の意味で、「Do you know ヒポドロモ?」と聞くと、ギリシャ語と手振りまじりで「この道をまっすぐ行って、左に曲がって、またまっすぐ行けばあるよ」とそんなニュアンスのことを教えてくれた。どうやら僕らの進むべき道は、間違っていないらしい。「Thank you」と残して、僕らは歩き出す。後ろを振り返ると、青年の傍らにはさっきの野良犬。そして、羊の群れがあった。その青年は、羊飼いだった。はじめて本物の羊飼いを見た。まさか、童話の「オオカミが出たぞ」とうそぶく羊飼いではないだろうなぁ、などと馬鹿な想像を巡らせて、ふと笑みがこぼれた。

羊飼いに遭遇するなんて、僕らは一体どこに迷い込んだのだろうか。さっきのペンキまみれのオジさんといい、羊飼いの青年といい、まるでお伽の国を彷徨っているようだった。そろそろ白馬に乗ったナイトでも現れてくれないだろうか。しかし、現れたのは白馬のナイトではなく、機械の馬車に乗った魔法使いだった。
僕らがひと気のない道をトボトボ歩いていると、一台の車が横で止まった。窓が開き、金髪に染め上げた髪の毛をカールさせ、サングラスをかけたマダムが顔を出した。
「Where do you go?」
「ヒポドロモ…」
乗りなさいというジェスチャー付きで、「OK.Come in」と言った。「Really?」と飛びつく2人。“地獄に仏”とはこのことか。安易に知らない人の車に乗る危険も考えたが、何かあってもおばさん一人ならば勝てると思った。
暑いから歩くのは大変でしょう、どこから来たの、日本に友達がいるのよ、そんな会話をしながら、5分ほど走った。おばさんは、左前方に見える建物を示して「あれがヒポドロモよ。私はここを右に曲がるから、ここでいいかしら?」と言う。「OK,OK.Thank you」と車を降りる僕ら。

名も告げず、おばさんはさっそうと走り去って行った。

いよいよ視界に見えて来た競馬場。もうゴールは目の前だ。

ペンキ塗りのオジさん、羊飼いの青年、金髪のマダム…アテネの郊外で出会った3人の神様がいなければ、きっと競馬場に辿り着く事はできなかった。二度と出会うことはないかもしれないが、何年、何十年経って、この日のことを思い出したら、きっと主要な登場人物として語られるだろう。
だから、言えなかったこの言葉を、この場を借りて言いたい。
「Ευχαριστω.(ありがとう)」


そして、いざ競馬場へ。
スポンサーサイト
// 22:39 // ギリシャ競馬 // Trackback(0) // Comment(0)
<<Markopoulo写真館。 | ホーム | バスパニック。>>
コメント
 コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

 トラックバック
トラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。